ひな人形

収納飾り

収納が工夫された雛(ひな)人形です。飾り台を箱状に作り、その中に人形やお道具などをコンパクトに納めることができるようになっています。
また、収納飾りには、三段飾りと親王飾りがあります。親王飾りは二人だけの構成で、三段飾りの多くは親王と官女、合わせて五人の構成となります。コンパクトさが求められる収納飾りでは、限られた飾り台の上に、親王を置くか五人を置くかでその人形の大きさが決まります。人数が多いほど小さな人形を使い、人数が少ないほど大きな人形を使います

写真:収納飾り

お人形名称・紹介
親王(しんのう)

親王(しんのう)

一番上は内裏雛・親王雛と呼ばれ、男雛・女雛の一対のお人形。
「殿と姫」呼ばれることもあります。
お雛様の男雛・女雛は、天皇と皇后を表しており、天皇皇后の結婚式を模しています。夫婦の理想像である天皇と皇后のように、良縁に巡り会えますようにと祈りが込められています。

官女(かんじょ)

官女(かんじょ)

天皇皇后である男雛・女雛の身の回りのお世話をする宮仕えの女性たち。
※官女とは
古来、宮廷において女性に何らかの官職を与え、君主や后妃の日常の雑役に就いたのが始まりとされます。男子禁制とされる後宮や后妃の私生活の管理には女性の官僚が使用されることが多かったので女性官人を「女官」と呼びました。宮廷行事や節会には給仕につくこともあったようです。ちなみに、高級女官(上臈)を「にょかん」、雑任級の下級女官(下臈)を「にょうかん」と呼びましたが明治以降に呼び方を「じょかん」に統一しました。 ※京風飾りの場合、三方の代りは嶋台になります。

お道具名称・紹介
1 飾り台(かざりだい)

飾り台(かざりだい)

お人形やお道具を飾り付ける台です。

2 屏風(びょうぶ)

屏風(びょうぶ)

親王の後ろに飾り付けます。金屏風や木製屏風等様々な種類があります。日本ならではの風景や柄等が描かれた物も多く、雛(ひな)人形の美しさをより際立たせます。

3 雪洞(ぼんぼり)

雪洞(ぼんぼり)

親王の両脇に飾られる雪洞(ぼんぼり)は江戸時代に、「ぼやけていてはっきりしないさま」などの意味でつかわれた「ぼんぼり」 が名前の由来とされています。

4 纓(えい)

纓(えい)

冠の後ろに挿す付属品です。

5 冠(かんむり)

冠(かんむり)

束帯を着用する際に着用します。

6 笏(しゃく)

笏(しゃく)

束帯を着用する際に手に持つ長細い板です。
実際には威厳を示す為ではなく、公事の際、笏(しゃく)の後ろにメモ書きした紙を張り付けるなどして活用されていたようです。

7 太刀(たち)

太刀(たち)

束帯を着用する際に腰に差す刀です。

8 檜扇(ひおうぎ)

檜扇(ひおうぎ)

束帯を着用する際に手に持ちます。
宮中行事の作法などをメモするために用いられたともいわれますが、女性の場合は顔を隠すためにも用いたので近世では「大翳(おおかざし)」とも呼びました。

9 菱台(ひしだい)

菱台(ひしだい)

菱餅を飾り付ける為の台です。 菱餅の緑は草萌える大地。白は雪の純白。ピンクは桃の花を表しており、三月の早春の景色を象徴しています。菱餅のヨモギは、古来より厄を払う薬草で造血作用があり、桃は古代中国では魔除けの力があるとされ、皮膚病の薬としても珍重されていました。また菱餅の赤は、くちなしで染められていて解毒作用があったそうです。いずれも汚れを払う薬草ですから、縁起がよく生命力があり、女の子の健やかな成長を願うひな祭りにふさわしいものです。

10 三方(さんぽう)

三方(さんぽう)

三方向に穴があいている台で、おもてなしに使用するものです。

11 加えの銚子(くわえのちょうし)

加えの銚子(くわえのちょうし)

鍋に似た形の金属製の器。銚子の一種でかつては宴席で酒を注ぎ勧めるのに使用されていたものですが、室町時代以降は銚子が晴れの席に用いられるようになりました。

12 三方(さんぽう)・嶋台(しまだい)

三方(さんぽう)・嶋台(しまだい)

祝儀の飾りの置物。
三方の由来は名前の由来は三方向に穴があいている事から、嶋台は入江の形状をした島の姿に吉祥文様を配していることから嶋台と呼びます。
※京風飾りの場合、三方の代りは嶋台になります。

13 長柄銚子(ながえのちょうし)

長柄銚子(ながえのちょうし)

長い柄のある酒器で「銚子」とも言います。盃に酒を注ぐもので長い部分を長柄(ながえ)と呼んでいます。

14 高杯(たかつき)

高杯(たかつき)

食べ物等を身分の高い人に献上する為に使う足つきの台です。

15 橘(たちばな)

橘(たちばな)

内裏の紫宸殿前に植えられた橘の木のことです。天皇側近の武官として重要な存在であった左右近衛府(このえふ)がこの橘から南を陣としたところから名づけられれました。橘は実より花や常緑の葉が注目され松などと同様、常緑が「永遠」を喩えるということで喜ばれました。

16 御駕籠(おかご)

御駕籠(おかご)

人が乗り込む籠の部分を一本の棒に吊し、複数人で棒を前後から担いで運ぶ乗り物。同様に人力で人を運ぶ輿(こし)は、2本以上の棒の上に人が乗る台を載せたものです。

17 重箱(じゅうばこ)

重箱(じゅうばこ)

室町時代の文献に「重箱」の記述があり、名前の由来は箱を何段にも重ねた事からだそうです。 その歴史はかなり古く一般庶民に普及したのは江戸時代でした。狩りやお花見なに出かけるときにも重宝されたようです。現代ではお正月のおせちを入れるものという感覚のようです。

18 御所車(ごしょぐるま)

御所車(ごしょぐるま)

交通手段のひとつとして平安時代では貴族の一般的な乗り物でしたが、後には移動のための機能性よりも、使用者の権威を示す傾向がありました。基本的に男女の区別がない一方、昇降には細かい作法があり女性が乗る場合には「出衣(いだしぎぬ)」といって簾(すだれ)の下から衣や下簾(したすだれ)を出すことで「女車」と分かり、その趣向・風情で身分・家柄もある程度表したそうです。

19 桜(さくら)

桜(さくら)

右近の橘と同様に、左近の桜とは紫宸殿(ししんでん)南階段下の東方に植えられた桜。朝儀の際、左近衛府の武官がこの南側に詰めたことから名づけられました。現在も京都御所内の紫宸殿に植えられています。