ひな人形

十五人飾り

最も人数が多いのが十五人飾りで、十五人飾りには「七段飾り」と「五段飾り」があります。
中でも一番豪華で大きな飾りが「十五人揃い七段飾り」で、これを少しコンパクトにしたのが「十五人揃い五段飾り」になります。また、少し人数の少ない飾りとして、「十人揃い五段飾り」があります。
一般的に十五人揃いには、七段飾り・五段飾り共に、人形十五人と雛道具、雪洞、桜橘などが含まれ、十人揃いは人形十人と雛道具、雪洞、桜橘などが含まれます。

写真:十五人飾り

お人形名称・紹介
親王(しんのう)

親王(しんのう)

一番上は内裏雛・親王雛と呼ばれ、男雛・女雛の一対のお人形。
「殿と姫」呼ばれることもあります。
お雛様の男雛・女雛は、天皇と皇后を表しており、天皇皇后の結婚式を模しています。夫婦の理想像である天皇と皇后のように、良縁に巡り会えますようにと祈りが込められています。

官女(かんじょ)

官女(かんじょ)

天皇皇后である男雛・女雛の身の回りのお世話をする宮仕えの女性たち。
※官女とは
古来、宮廷において女性に何らかの官職を与え、君主や后妃の日常の雑役に就いたのが始まりとされます。男子禁制とされる後宮や后妃の私生活の管理には女性の官僚が使用されることが多かったので女性官人を「女官」と呼びました。宮廷行事や節会には給仕につくこともあったようです。ちなみに、高級女官(上臈)を「にょかん」、雑任級の下級女官(下臈)を「にょうかん」と呼びましたが明治以降に呼び方を「じょかん」に統一しました。

五人囃子(ごにんばやし)

五人囃子(ごにんばやし)

大鼓、小鼓、横笛、謡と、能楽を演奏する楽団が並びます。
※囃子とは
能・狂言・歌舞伎・長唄・寄席演芸など各種の芸能で、拍子をとる、または雰囲気を出すために奏する音楽を指す日本の伝統文化でありユネスコ無形文化遺産でもある能楽の演奏形式の一です。五人囃子は能楽を上演する場合の地謡一人と囃子方四名で構成されています。
※五人囃子が被っているのは「烏帽子(えぼし)と言う、三角形のような形をした帽子です。

随身 右大臣(ずいじん うだいじん)

随身 右大臣(ずいじん うだいじん)

宮廷を養護する武官。今で言えば、天皇皇后、両陛下をお守りする、SP・ガードマンのような存在で、若者の方が右大臣です。 天皇のみ着けられる立纓(りゅうえい)とは異なる巻纓冠(けんえいかん)、礼装の武官束帯で持つため装飾の施された美しい「儀仗の弓(ぎじょうのゆみ)」、儀式に用いる装飾的で形式化した「儀仗の剣(ぎじょうのけん)」、鷲・鷹など鳥の尾羽を使用して作られたとされる矢羽を身に着けています。

随身 左大臣右大臣(ずいじん さだいじん)

随身 左大臣右大臣(ずいじん さだいじん)

右大臣同様宮廷を養護する武官。老人の方が左大臣です。 身に着けているものは右大臣と同じですが、左大臣の方が位が高く、「闕腋の袍(けってきのほう)」と呼ばれる緋色と先出の黒色の袍を纏っています。
(服制では色は黒が赤より上位の色となっています。)

仕丁(しちょう)

仕丁(しちょう)

別名を衛士(えじ)と言い、天皇が外出するときの従者として色々な雑務をこなしています。 向かって右から台笠、沓台、立傘を持っています。(京雛などでは、御所の掃除道具をしているため箒やちりとり熊手が持ち物になっています。) 顔をよく見ると、泣き上戸、笑い上戸、怒り上戸と表情豊かです。

お道具名称・紹介
1 飾り台(かざりだい)

飾り台(かざりだい)

お人形やお道具を飾り付ける台です。

2 屏風(びょうぶ)

屏風(びょうぶ)

親王の後ろに飾り付けます。金屏風や木製屏風等様々な種類があります。日本ならではの風景や柄等が描かれた物も多く、雛(ひな)人形の美しさをより際立たせます。

3 雪洞(ぼんぼり)

雪洞(ぼんぼり)

親王の両脇に飾られる雪洞(ぼんぼり)は江戸時代に、「ぼやけていてはっきりしないさま」などの意味でつかわれた「ぼんぼり」 が名前の由来とされています。

4 纓(えい)

纓(えい)

冠の後ろに挿す付属品です。

5 冠(かんむり)

冠(かんむり)

束帯を着用する際に着用します。

6 笏(しゃく)

笏(しゃく)

束帯を着用する際に手に持つ長細い板です。
実際には威厳を示す為ではなく、公事の際、笏(しゃく)の後ろにメモ書きした紙を張り付けるなどして活用されていたようです。

7 太刀(たち)

太刀(たち)

束帯を着用する際に腰に差す刀です。

8 檜扇(ひおうぎ)

檜扇(ひおうぎ)

束帯を着用する際に手に持ちます。
宮中行事の作法などをメモするために用いられたともいわれますが、女性の場合は顔を隠すためにも用いたので近世では「大翳(おおかざし)」とも呼びました。

9 三方(さんぽう)

三方(さんぽう)

三方向に穴があいている台で、おもてなしに使用するものです。

10 加えの銚子(くわえのちょうし)

加えの銚子(くわえのちょうし)

鍋に似た形の金属製の器。銚子の一種でかつては宴席で酒を注ぎ勧めるのに使用されていたものですが、室町時代以降は銚子が晴れの席に用いられるようになりました。

11 三方(さんぽう)・嶋台(しまだい)

三方(さんぽう)・嶋台(しまだい)

祝儀の飾りの置物。
三方の由来は名前の由来は三方向に穴があいている事から、嶋台は入江の形状をした島の姿に吉祥文様を配していることから嶋台と呼びます。
※京風飾りの場合、三方の代りは嶋台になります。

12 長柄銚子(ながえのちょうし)

長柄銚子(ながえのちょうし)

長い柄のある酒器で「銚子」とも言います。盃に酒を注ぐもので長い部分を長柄(ながえ)と呼んでいます。

13 高杯(たかつき)

高杯(たかつき)

食べ物等を身分の高い人に献上する為に使う足つきの台です。

14 太鼓(たいこ)

太鼓(たいこ)

太鼓は、いわゆる締太鼓のことで、構造は基本的に鼓(つづみ)とかわらず、音を響かせない小さな音と響かせる大きな音の2種で、四拍子のリズムを主導する役割を担います。

15 大皮(おおかわ)

大皮(おおかわ)

材質、構造はほぼ小鼓に等しく、全体的にひとまわり大きくなっています。左手で持って左膝に置き、右手を横に差し出して強く打ちこみます。小鼓と違い左手で調緒(しらべお)の調節をしないために、音色の種類は、右手の打ち方によって分けます。

16 小鼓(こつづみ)

小鼓(こつづみ)

鼓は、桜の胴に、表裏2枚の馬の革を置き、「調緒(しらべお)」という麻紐で締めあげた楽器です。左手で調緒を持ち、右肩にかついで右手で打ち、調緒のしぼり方、革を打つ位置、打ち方の強弱によって音階を出すことが出来ます。

17 笛(ふえ)/能管(のうかん)

笛(ふえ)/能管(のうかん)

竹でできています。唯一のメロディ楽器でありながら打楽器的なリズムを刻む奏法を主としています。

18 扇(おうぎ)

扇(おうぎ)

謡う際にはそれを構え、休みの際には下ろします。謡はもちろん、扇の所作も芸のうちとされていたそうです。

19 脇差(わきざし)

脇差(わきざし)

太刀よりも小さい予備の武器です。
正規の刀と違い、あくまでも補助装備という扱いであった為、町人等も携帯する事が許されていたようです。

20 巻纓冠(けんえいかん)

巻纓冠(けんえいかん)

巻纓冠(けんえいかん)は警固の任務の際にかぶるものです。
左右には耳当てのような緌(おいかけ)と呼ばれる馬の毛で作られた装飾がついています。

21 背矢(せや)

背矢(せや)

警護に使用する矢を束ねて背中に差します。

22 持矢(もちや)

持矢(もちや)

警護に使用する矢で、羽部分には、主として鳥の尾羽で鷲・鷹など大形のものが使用されていたようです。

23 儀仗の弓(ぎじょうのゆみ)

儀仗の弓(ぎじょうのゆみ)

礼装の武官束帯で持つため装飾の施された美しい弓です。

24 儀仗の剣(ぎじょうのけん)

儀仗の剣(ぎじょうのけん)

儀式に用いる装飾的で形式化した太刀で、刀身には刃はつけなかったようです。

25 御膳(ごぜん)

御膳(ごぜん)

お膳の高級品の型です。四方側面に格狭間(こうざま)を大きく透かした足の縁に盤を載せ懸けた構造から懸盤といいます。黒漆金蒔絵の装飾が施されてとても豪華です。江戸時代後期になると雛人形も華美になり、大名家では雛に供えて人も祝う雛の料理も贅沢になりました。懸盤膳(かけばんぜん)の中には本物の食物が入っていたそうです。

26 菱台(ひしだい)

菱台(ひしだい)

菱餅を飾り付ける為の台です。 菱餅の緑は草萌える大地。白は雪の純白。ピンクは桃の花を表しており、三月の早春の景色を象徴しています。菱餅のヨモギは、古来より厄を払う薬草で造血作用があり、桃は古代中国では魔除けの力があるとされ、皮膚病の薬としても珍重されていました。また菱餅の赤は、くちなしで染められていて解毒作用があったそうです。いずれも汚れを払う薬草ですから、縁起がよく生命力があり、女の子の健やかな成長を願うひな祭りにふさわしいものです。

27 橘(たちばな)

橘(たちばな)

内裏の紫宸殿前に植えられた橘の木のことです。天皇側近の武官として重要な存在であった左右近衛府(このえふ)がこの橘から南を陣としたところから名づけられれました。橘は実より花や常緑の葉が注目され松などと同様、常緑が「永遠」を喩えるということで喜ばれました。

28 桜(さくら)

桜(さくら)

右近の橘と同様に、左近の桜とは紫宸殿(ししんでん)南階段下の東方に植えられた桜。朝儀の際、左近衛府の武官がこの南側に詰めたことから名づけられました。現在も京都御所内の紫宸殿に植えられています。

29 烏帽子(えぼし)

烏帽子(えぼし)

礼服を着用する際に成人男性がかぶる帽子です。庶民出身である仕丁(しちょう)は冠ではなく烏帽子(えぼし)をかぶっていました。

30 台笠(だいがさ)・熊手(くまで)

台笠(だいがさ)・熊手(くまで)

棒の先端に笠を付け、そのうえにさらに袋にかぶせたものを台笠(だいがさ)と呼びます。
※京風飾りの場合、台笠の代りは熊手(くまで)になります。

31 沓台(くつだい)・ちりとり

沓台(くつだい)・ちりとり

貴人の靴を置くための台です。
※京風飾りの場合、沓台(くつだい)の代りはちりとりになります。

32 立傘(たちがさ)・ほうき

立傘(たちがさ)・ほうき

こちらは被る笠ではなく、差す傘が袋の中に納められています。
※京風飾りの場合、立傘(たちがさ)の代りはほうきになります。

33 箪笥(たんす)

箪笥(たんす)

姫君のきらびやかで優雅な生活を象徴するかのような豪華な箪笥です。当時、箪笥を持つ事が出来たのは上流階級の人達だけで、庶民は多くの衣類を持ち合わせておらず長持など箱の形状のものに衣類や家財道具を収納していたようです。

34 挟箱(はさみばこ)

挟箱(はさみばこ)

外出する際に衣類等を収納する箱です。 収納した後は従者に担がせて運びます。

35 長持(ながもち)

長持(ながもち)

衣類や寝具を入れるための長方形の容器です。長端部には棹(さお)を通すための金具があり、運搬時はここに太い棹(長持棹)を通して2人で担ぎ、持ち運びます。

36 鏡台(きょうだい)

鏡台(きょうだい)

衣類や寝具を入れるための長方形の容器です。長端部には棹(さお)を通すための金具があり、運搬時はここに太い棹(長持棹)を通して2人で担ぎ、持ち運びます。

37 針箱(はりばこ)

針箱(はりばこ)

今のようなミシンがない時代、既製品など無く衣類のみならず日常生活のすべてが手作りだった時代、いつもそばにあるお針箱は大活躍だったと思われます。

38 火鉢(ひばち)

火鉢(ひばち)

中には灰を入れて暖房のように使う道具。火桶と呼ばれていたものも後世には火鉢の名で呼ばれるようになりました。

39 衣装袋(いしょうぶくろ)

衣装袋(いしょうぶくろ)

婚礼の飾調度として、表地は唐織、裏地は綾や平絹で華麗に仕立てたようです。装束や調度品を納めて持参するので地質を強固にするため、組緒を縦横にめぐらし表刺縫いにしたことから表刺袋(うわざしぶくろ)とも呼ばれました。
※衣装袋がない場合もあります。

40 茶道具(ちゃどうぐ)

茶道具(ちゃどうぐ)

茶道は武家の子女にとって花嫁修業というより’たしなみ’に近い存在だったようです。

41 御駕籠(おかご)

御駕籠(おかご)

人が乗り込む籠の部分を一本の棒に吊し、複数人で棒を前後から担いで運ぶ乗り物。同様に人力で人を運ぶ輿(こし)は、2本以上の棒の上に人が乗る台を載せたものです。

42 重箱(じゅうばこ)

重箱(じゅうばこ)

室町時代の文献に「重箱」の記述があり、名前の由来は箱を何段にも重ねた事からだそうです。 その歴史はかなり古く一般庶民に普及したのは江戸時代でした。狩りやお花見なに出かけるときにも重宝されたようです。現代ではお正月のおせちを入れるものという感覚のようです。

43 御所車(ごしょぐるま)

御所車(ごしょぐるま)

交通手段のひとつとして平安時代では貴族の一般的な乗り物でしたが、後には移動のための機能性よりも、使用者の権威を示す傾向がありました。基本的に男女の区別がない一方、昇降には細かい作法があり女性が乗る場合には「出衣(いだしぎぬ)」といって簾(すだれ)の下から衣や下簾(したすだれ)を出すことで「女車」と分かり、その趣向・風情で身分・家柄もある程度表したそうです。